LABEL - TOHO RECORDS (JAPON)
FORMAT - LP
盤質：VG+ ジャケット:VG+

新藤兼人や大島渚の映画音楽を担う林光。映画音楽が持つイマジョナリティを刺激する豊潤なサウンドは流石なものです。サンプリングソースとしていいのでは。日本映画好きの貴方に渡って欲しいな。「インタビュー」と「収録作品について」のライナー付き(帯なしです)。僕はこの機会に大島渚『無理心中 日本の夏』を見てみましたよ。(イノウエ) 名作ですよね。

「役者の表情と行為は意味を断絶し、まさにそこに存在する肉体となる。男の死を望む眼球。女の乱調な身振り。セックスシーンはいわゆる濡れ場というのではなく息を呑むほどにタナトス漂う場面である。絶頂のなかでカメラを睨む男と女の視線。それは風景を撃つピストルと交錯する。唐突に沈黙が及び言表が亀裂する。そこに映されるイメージ。いや、イメージを破るイメージ。それは空間の重圧を斥けるのだ。ナンセンスもユーモアもその兆候なのだろう。それが大島渚の根底にはあるのかもしれない。一瞬の間隙で現れる偽りなき肉体。欲望。うごめき。それを目撃することになるのだ。しかし、あの生気を欠いたアナウンサーの声は本当に気色がわるい。もちろん姿形などない。これはこれで当店では特筆に値すると思う。「黒人暴動が続くアメリカの夏をロング・アンド・ホット・アメリカンサマー、長い熱いアメリカの夏といいますが、それに対してこの日本の狂気の夏をいったい何と名付けましょうか」単調に響く。劇中の輩共は立ち尽くす。大島渚には運動がただの記号になるのを分かっていたのかもしれない。さっさと閉塞状況的な集合体から抜け出して存在を確かめ合ったのは、死を求めて蒸発した男と頭のネジの外れた女なのです。白い肉体の背景に落下しつつある固有の生。とめどない"死の欲動”なのですよ。」 (イノウエ)(1978)